ジュラコン(POM)と他素材の違いを解説|フライス加工における特徴と選び方
ジュラコン(POM)は、エンジニアリングプラスチックの代表格として自動車部品から精密機械まで幅広く利用されています。本記事では「ジュラコン POM 違い フライス加工における特徴」をテーマに、ジュラコンと他の樹脂の違い、フライス加工における特性、さらに選定時のポイントをわかりやすく解説します。初心者の方にも理解できるよう、専門用語には丁寧な補足を加えました。
ジュラコン(POM)の基本特性
ジュラコン(POM:ポリアセタール樹脂)は、機械的強度や耐摩耗性に優れたエンジニアリングプラスチックの一種です。特に寸法安定性と摺動性に強みを持ち、金属の代替材としても利用されることがあります。ここではまず、その基本特性を整理してみましょう。
POM(ポリアセタール)の種類
POMには「ホモポリマー」と「コポリマー」の2種類があります。ホモポリマーは結晶性が高く剛性が強い一方、耐薬品性に弱い面があります。コポリマーは耐薬品性や耐熱安定性に優れ、バランス型の素材として幅広く使われています。
物性と強み
- 高い引張強度と剛性
- 低摩擦係数による優れた摺動性
- 水分吸収率が低く、寸法安定性が高い
- 加工性が良好で、切削・フライス加工に向く
ジュラコンと他素材の違い
次に、ジュラコンと他の代表的な樹脂素材(ナイロンやポリエチレンなど)との違いを比較してみましょう。違いを把握することで、フライス加工の場面で最適な素材選びが可能になります。
POMとMCナイロンの違い
MCナイロンは耐摩耗性と衝撃吸収性に優れていますが、水分吸収が多いため寸法精度が求められる部品には不向きです。POMは水分吸収が少なく、精密加工部品に適しています。両者は似た分野で使われますが、精度要求の有無で選び分けられるのが一般的です。
POMとPE(ポリエチレン)の違い
PEは軽量で耐薬品性に優れますが、剛性や耐摩耗性ではPOMに劣ります。強度を重視する場合はPOM、耐薬品性や低コストを重視する場合はPEを選択するのが合理的です。
素材 | 強度 | 寸法安定性 | 耐摩耗性 | 耐薬品性 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
POM(ジュラコン) | ◎ | ○ | MCナイロン | △(吸水あり) | △ | PE |
フライス加工におけるジュラコンの特徴
フライス加工とは、回転するカッターを使って材料を削り出す加工法です。POM(ジュラコン)はこの加工において、切削性や仕上がり面で特に優れた特徴を持っています。
切削性の高さ
ジュラコンは切削抵抗が小さく、刃物の摩耗も比較的少ないため、加工コストを抑えられるメリットがあります。また、チップが細かく出るため加工後の仕上がりも良好です。
寸法精度の安定性
吸水性が低いため、加工後の寸法変化が小さく、精密部品に向いています。この特徴は、自動車のギアやベアリング保持部などのクリアランスが厳しい用途で特に重要です。
表面仕上げの良さ
フライス加工後の表面が滑らかで、二次加工や研磨の工程を省略できる場合があります。そのため、量産時のコストダウンにつながります。
用途別に見るジュラコンの活用事例
実際にジュラコンがどのような分野で利用されているかを、加工方法と用途の観点から紹介します。自動車部品(ギア、ベアリングホルダー)産業機械部品(ローラー、スライダー)電気・電子機器部品(コネクター、絶縁パーツ)日用品(精密な歯車を必要とする機器)
詳しい加工事例はこちらの解説記事でも紹介しています。
まとめ|ジュラコンと他素材の違いを理解し、フライス加工に活かす
ジュラコン(POM)は強度・寸法安定性・摺動性に優れ、フライス加工でも高いパフォーマンスを発揮する素材です。MCナイロンやPEなど他素材との違いを理解することで、用途や精度要求に応じた最適な材料選択が可能になります。コストと品質を両立させるためには、素材特性と加工性を正しく把握して活用することが重要です。
よくある質問
Q. ジュラコン(POM)のフライス加工では割れやすいですか?
A. ジュラコンは強度と耐衝撃性に優れているため、通常条件では割れにくい素材です。ただし切削速度が高すぎる場合や工具摩耗が進んでいる場合にはバリや欠けが発生することがあります。適切な加工条件についてはフライス加工の解説ページをご覧ください。
Q. MCナイロンとジュラコンはどのように使い分けるべきですか?
A. 寸法精度を重視する精密加工には吸水率が低いジュラコンが適しています。一方で、衝撃吸収性や耐摩耗性が必要な部品にはMCナイロンが選ばれることが多いです。詳しい素材選定の考え方は素材比較の解説記事でも紹介しています。
Q. ジュラコンのフライス加工に冷却液は必要ですか?
A. 基本的には乾式加工が可能ですが、長時間の連続加工や高精度が求められる場合には冷却液の使用が推奨されます。冷却液は熱膨張や表面変質を抑える効果があり、工具寿命の延長にも役立ちます。参考: JIS(日本産業規格) の関連情報