SK分類とSK1〜SK5の性能を完全理解する|用途別選定と設計・加工で失敗しないための徹底解説
SK鋼とは何か|炭素工具鋼の基本定義と特徴
SK鋼とは、JIS規格で規定されている炭素工具鋼の総称です。炭素量が0.6〜1.5%程度と比較的高く、焼入れによって高い硬度を得られることが最大の特徴です。これにより、刃物、パンチ、ダイス、ゲージ、測定器部品など、摩耗や塑性変形に強さが求められる用途で多用されています。
炭素工具鋼としてのSK鋼の位置付け
工具鋼は大きく以下の3系統に分類されます。
- 炭素工具鋼(SK)
- 合金工具鋼(SKS、SKD、SKHなど)
- 高速度鋼(ハイス鋼)
この中でSK鋼は、合金元素をほとんど含まないため、コストが低く、熱処理性が良好である一方、耐熱性や耐摩耗性では合金工具鋼に劣るという位置付けになります。
SK分類の基本構造|SK1〜SK5の違いを決める要因
SK1からSK5までの分類は、主に炭素含有量の違いによって決まっています。炭素量が増加するほど、焼入れ後の硬度が高くなり、耐摩耗性は向上しますが、靱性(粘り強さ)は低下し、加工性も悪化します。
SK1〜SK5の化学成分と基本性能
| 鋼種 | 炭素量(%) | 特徴 | ||||||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| SK1 | 1.30〜1.50 | 最高硬度・耐摩耗性重視 | SK2 | 1.10〜1.30 | 高硬度と靱性のバランス | SK3 | 1.00〜1.10 | 標準的な工具鋼 | SK4 | 0.90〜1.00 | 加工性と靱性重視 | SK5 | 0.80〜0.90 | 高靱性・衝撃用途向け |
このように、SK1からSK5へと進むにつれて、硬度・耐摩耗性は低下し、代わりに靱性や加工性が向上する構造となっています。
SK1〜SK5の性能比較|硬度・靱性・耐摩耗性の違い
焼入れ後硬度の比較
SK鋼は焼入れによってマルテンサイト組織を形成し、高硬度を得ます。焼入れ後の硬度の目安は以下の通りです。
焼入れ後硬度(HRC) 63〜65 62〜64 60〜63 58〜61 55〜59この硬度差が、刃物の切れ味や金型寿命に直結します。
靱性と耐衝撃性の違い
炭素量が高いほど靱性は低下します。SK1は非常に硬い反面、衝撃に弱く、欠けや割れが生じやすいという特徴があります。一方、SK5は衝撃荷重に強く、打撃工具や剪断工具に適しています。
SK鋼の用途別最適選定|SK1〜SK5の実践的使い分け
SK1が適する用途
精密刃物紙断裁刃超精密ゲージSK1は最高の切れ味と耐摩耗性を要求される用途に使用されます。ただし、衝撃が加わると欠損リスクが高いため、静的荷重用途に限定されます。
SK2・SK3が適する用途
打抜きパンチ小型プレス金型一般刃物この領域が最も汎用的であり、性能とコストのバランスが良好です。金型用材料の基本選定については、「金型材料の選定基準に関して解説」で詳しく解説しています。
SK4・SK5が適する用途
シャー刃ハンマー部品農機具刃衝撃や曲げ応力が繰り返し作用する用途では、靱性重視のSK4・SK5が適しています。
SK鋼の熱処理特性|焼入れ・焼戻し条件と性能変化
焼入れ温度と冷却方法
SK鋼の焼入れ温度は760〜800℃程度が一般的です。冷却は水冷または油冷が使用され、硬度と割れリスクのバランスを考慮して選定されます。
焼戻しによる靱性調整
焼入れ後は必ず焼戻しを行い、内部応力を除去します。焼戻し温度を高くすることで靱性が向上し、低くすると硬度を維持できます。
熱処理工程の設計ミスは、工具寿命を大きく左右します。
加工性と切削条件|SK鋼を効率良く加工するポイント
SK鋼は焼入れ前の焼なまし状態では比較的良好な切削性を示しますが、焼入れ後は非常に硬くなり、研削加工が主体となります。
焼なまし材の切削条件
超硬工具推奨低速・高送り切削油の十分な使用SK鋼と他工具鋼との比較|SKD・SKSとの違い
SK鋼は低コストで使いやすい一方、耐熱性や高負荷用途では合金工具鋼に劣ります。
主用途 SK 低コスト・高硬度 刃物・簡易金型 SKS 靱性向上 衝撃工具 SKD 高耐摩耗・耐熱 プレス金型SK分類と性能を理解することが生産性向上につながる理由
SK鋼の正確な選定は、工具寿命の延長・加工コスト削減・品質安定に直結します。材料費だけでなく、加工性、熱処理コスト、交換頻度まで含めたトータルコストで評価することが重要です。
まとめ|SK1〜SK5の性能理解が設計品質を左右する
SK分類とSK1〜SK5の性能を体系的に理解することで、工具設計や金型設計の精度が飛躍的に向上します。硬度だけでなく、靱性・加工性・用途環境まで考慮した材料選定が、製造現場全体の効率化につながります。