SS400フラットバーの基礎知識と規格を徹底解説|選定から加工まで完全ガイド

SS400フラットバーの基礎知識と規格を徹底解説|選定から加工まで完全ガイド

SS400フラットバーは、建築・機械製作で最も使われる汎用鋼材です。本記事では、SS400の材質特性、JIS規格、サイズ展開、加工方法、用途事例まで、製造現場で必要な基礎知識を網羅的に解説します。

SS400フラットバーとは

SS400フラットバーは、JIS G 3101で規定された一般構造用圧延鋼材の平鋼です。SSは「Steel Structure(構造用鋼)」、400は最小引張強さ400N/mm²を示します。断面が長方形の形状で、切断・穴あけ・曲げ・溶接などの加工性に優れ、建築や機械製造で広く使用されています。

 

製造方法は熱間圧延で、表面には黒皮(ミルスケール)と呼ばれる酸化被膜が形成されています。炭素含有量は0.15〜0.25%程度で、適度な強度と優れた加工性のバランスが特徴です。

 

SS400の機械的性質

 


SS400の主な機械的性質(JIS G 3101準拠)
項目 数値・範囲 備考
引張強さ 400〜510 N/mm² 破断時の最大応力 降伏点 245 N/mm²以上 厚さ16mm以下 伸び 17%以上 5号試験片 炭素含有量 0.15〜0.25%程度 規格上の明確な規定なし 密度 7.85 g/cm³ 鉄の標準密度

 

他の鋼材との比較

 

S45Cは炭素含有量が約0.45%で、SS400より強度・硬度が高い反面、溶接性や加工性は劣ります。歯車やシャフトなど高強度が必要な機械部品に使用されます。

 

SUS304(ステンレス鋼)は耐食性に優れますが、価格はSS400の3〜5倍です。食品機械や化学プラントなど、衛生面や耐薬品性が重視される用途で選ばれます。

 

SS400DはSS400の改良版で、化学成分の管理が厳格です。溶接性と低温靭性が向上しており、建築構造物や重要な溶接構造物に適しています。

 

JIS規格と寸法規格

 

SS400フラットバーはJIS G 3101(材料規格)とJIS G 3192(形状・寸法規格)で規定されています。寸法表示は「厚さ×幅×長さ」の順で表記します。例:9×50×4000(厚さ9mm、幅50mm、長さ4000mm)

 

標準サイズと寸法許容差

 

厚さは3〜100mm、幅は9〜200mm程度まで多様なサイズが流通しています。最も一般的なサイズは、厚さ6mm、9mm、12mm、幅25mm、30mm、40mm、50mmです。標準長さは3000mm、4000mm、5000mm、6000mmです。

 

寸法許容差の目安 許容差 厚さ ±0.3〜±1.0mm 幅 ±1.0〜±3.0mm 長さ +0〜+50mm

 

代表的なサイズと用途例 厚さ(mm) 幅(mm) 主な用途 6 25, 30, 40 軽量フレーム、ブラケット 9 30, 40, 50 機械台座、補強材 12 40, 50, 65 構造フレーム、架台 16〜25 50, 75, 100 重量機械基礎、大型構造物

 

材料証明とミルシート

 

ミルシートは材料の化学成分、機械的性質の試験結果、製造ロット番号が記載された品質証明書です。建築構造物や圧力容器など、法規制の対象となる製品では取得が義務付けられることがあります。

 

表面仕上げの種類

 

  • 黒皮仕上げ:標準仕上げ。黒褐色の酸化被膜付き
  • 酸洗仕上げ:黒皮を除去した明るい金属表面
  • 研磨仕上げ:機械研削による滑らかな表面
  • 亜鉛メッキ:耐食性向上のための表面処理

 

加工方法と加工条件

 

切断加工

 

シャーリング:薄板(6mm以下)に適用。高速で熱影響なし。切断面にダレやバリが発生

 

帯鋸盤・高速切断機:中厚板(6〜25mm)に最適。帯鋸は切断面が滑らか、高速切断機は作業速度が速い

 

ガス切断・プラズマ切断:厚板(25mm以上)や複雑形状に使用。プラズマの方が高速で熱影響範囲が小さい

 

穴あけ加工

 

推奨切削速度:ハイスドリルで20〜30m/min。送り速度は1回転あたり0.1〜0.3mm

 

厚板では、センタードリル→下穴→仕上げ穴の段階加工が推奨されます。切削油の使用で工具寿命が延長します。

 

曲げ加工

 

最小曲げ半径:板厚の1.5〜2倍程度。例:板厚9mmの場合、最小曲げ半径13.5〜18mm

 

スプリングバック:2〜5度程度発生。金型角度をオーバーベンドで設定して補正します。

 

溶接加工

 

主要溶接法:被覆アーク溶接、半自動アーク溶接(MAG/MIG)。溶接棒はE4316、E4319などの低水素系を推奨

 

板厚12mm以上では開先加工が必要。開先角度60〜70度、ルートギャップ2〜3mm

 

歪み対策:対称溶接、逆歪み法、仮付け溶接による拘束が有効

 

その他の加工

 

研削:溶接ビード除去、寸法仕上げタップ加工:めねじ形成。M6→φ5.0mm下穴、M8→φ6.8mm下穴表面処理:塗装、メッキ、黒染めなど

 

主な用途と実用事例

 

建築・土木分野

 

鉄骨構造の補強材(柱梁接合部、開口部周辺)階段踏み板受け材、手すり支柱橋梁補強材、擁壁補強バー耐震補強工事の後付け材

 

機械製造・産業機器

 

工作機械・産業機械の架台フレームコンベヤシステムの構造材固定治具、溶接治具の基材モーター取り付けブラケット

 

輸送機器関連

 

トラック荷台フレーム、特装車構造材トレーラー・キャンピングカーの床下フレーム鉄道車両の機器取り付けブラケット

 

農業・建設機械

 

トラクターアタッチメント、農作業機械フレーム建設機械のバケット補強材ビニールハウスの骨組み補強

 

用途別推奨板厚と表面処理 用途分野 推奨板厚(mm) 表面処理 建築構造 6〜12 屋外は塗装・メッキ必須 機械フレーム 12〜25 防錆塗装推奨 輸送機器 9〜16 メッキまたは塗装必須 治具・金具 用途に応じて選択

 

選定と調達のポイント

 

サイズ選定

 

構造計算に基づく選定が基本です。想定荷重に対して適切な断面係数を持つサイズを選びます。安全率は1.5〜3.0程度に設定します。

 

実務では過去の実績や経験則も活用します。例:機械架台補強リブは「12mm×50mm」、軽量フレームは「6mm×40mm」が標準的です。

 

調達方法

 

鋼材商社・メーカー直販:大量購入でコスト削減。最低発注量に注意オンライン鋼材販売:小ロット・急ぎの調達に便利定尺品vs切断品:定尺品は安価だが自社で切断加工が必要。切断品は割高だが納期短縮

 

品質確認

 

外観検査:傷、錆、変形、亀裂の確認寸法測定:厚さ、幅、長さを3箇所以上測定ミルシート:重要構造物では必ず取得

 

コスト最適化

 

材料取りの最適化で歩留まり向上低グレード材や在庫処分品の活用(強度要求が低い部位)長期契約・大口購入による価格交渉

 

保管とメンテナンス

 

適切な保管方法

 

屋内保管:雨水・夜露を避ける。湿度60%以下が理想積み方:地面から10cm以上離す。材料間に隙間を確保長期保管:防錆油塗布または防錆紙包装

 

錆の対処法

 

軽度の錆:ワイヤーブラシ、サンドペーパー、グラインダーで除去

 

広範囲の錆:サンドブラスト、ショットブラスト、酸洗いで除去

 

錆除去後は速やかに防錆処理(防錆油、塗装、メッキ)を施します。

 

製品のメンテナンス

 

屋外使用:年1〜2回の目視点検。塗装の剥がれや錆をチェック溶接部:腐食と亀裂の重点確認機械部品:変形・摩耗・疲労亀裂の定期検査

SS400フラットバーは建築構造材、機械フレーム、輸送機器の構造材、農業機械など幅広く使用されます。用途に応じて板厚や表面処理を選定することが重要です。詳しくは、SS400の用途例について解説をご覧ください。耐食性や規格についてはJIS規格関連(JISC/JSA)も参考になります。

SS400は切断、穴あけ、曲げ、溶接、研削など様々な加工が可能です。板厚や形状に応じてシャーリング、帯鋸盤、ガス切断、プラズマ切断などを使い分けます。加工条件の詳細はSS400の加工方法で解説をご確認ください。

SS400フラットバーは厚さ3〜100mm、幅9〜200mm、長さ3000〜6000mmが一般的で、厚さは±0.3〜±1.0mm、幅は±1.0〜±3.0mm、長さは+0〜+50mmの許容差があります。

まとめ

SS400フラットバーは、優れた加工性と溶接性、そして経済性を兼ね備えた汎用鋼材です。適切なサイズ選定、正しい加工方法、適切な保管とメンテナンスにより、建築から機械製造まで幅広い用途で長期的に活用できます。用途に応じたJIS規格の理解と、実務に即した加工技術の習得が、品質の高い製品作りにつながります。

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