A2017とA5052の違いとは?強度・耐食性・用途を徹底比較

A2017とA5052の違いは何か?」という問いの本質は、単なる数値比較ではありません。設計者や購買担当者が本当に知りたいのは、どの用途にどちらを選べば失敗しないのかという判断基準です。

A2017はAl-Cu系の高強度ジュラルミン系合金、一方A5052はAl-Mg系の耐食性・加工性に優れた汎用合金です。両者は同じアルミニウム合金でありながら、合金元素と強化機構が根本的に異なります。

合金系統の違い ― Al-Cu系とAl-Mg系

A2017(Al-Cu系)の特徴

A2017は主添加元素に銅(Cu)を含む2000系合金です。時効硬化(析出強化)によって高い引張強さを発揮します。
  • 代表的状態:T3、T4
  • 引張強さ:約390~470MPa
  • 耐力:約250~325MPa
  • 特徴:高強度・切削性良好・耐食性は低め
銅を含むことで析出強化が可能となり、鋼材に近い強度を得られる点が最大の魅力です。一方で、耐食性は比較的低く、腐食環境下では表面処理が前提となります。

A5052(Al-Mg系)の特徴

A5052はマグネシウム(Mg)を主添加元素とする5000系合金です。非熱処理型合金であり、加工硬化によって強度を確保します。代表的状態:H32、H34引張強さ:約210~260MPa耐力:約130~215MPa特徴:耐食性優秀・溶接性良好・曲げ加工性良好特に海水環境や屋外使用に強いことが大きな特徴です。構造材というよりは、カバー・筐体・板金部品などで広く採用されています。

機械的性質の比較 ― 数値で見る違い

項目 A2017-T3 A5052-H32
引張強さ 約430MPa 約230MPa 耐力 約280MPa 約160MPa 伸び 10~15% 12~20% 耐食性
数値を見ると、強度はA2017が約2倍に達する一方、耐食性はA5052が優位です。設計時には安全率や板厚増減で補えるのか、それとも材質変更が必要かを判断することが重要です。

加工性・溶接性・表面処理の違い

切削加工

A2017は切削性が良好で、旋盤・フライス加工に適します。銅を含むため被削性が高く、精密部品に向いています。アルミ切削の具体的な加工条件については、「アルミ切削加工の基礎に関して解説」で詳しく解説しています。

曲げ加工

A5052は延性が高く、曲げ割れが起きにくい特性があります。板金加工や筐体設計では優先的に検討されます。

溶接性

A5052は溶接性が良好ですが、A2017は溶接に不向きです。溶接構造を前提とするなら、A5052が基本選択となります。

用途別の選定基準

高強度が必要な場合

航空機部品高応力ボルト周辺部品精密機械構造部この場合はA2017が候補になります。ただし腐食環境ではアルマイト処理や塗装が必要です。

耐食性・加工性を優先する場合

制御盤筐体建築外装パネル船舶関連部品この用途ではA5052が最適です。アルミ板金設計のポイントは、「アルミ板金設計に関して解説」で詳しく解説しています。

コストと調達性の違い

一般的にA5052は流通量が多く、板材として標準在庫が豊富です。一方A2017は丸棒や鍛造材が中心で、板材の流通は限定的です。

失敗しないための判断フロー

1. 必要強度を算出
2. 使用環境(屋外・海水・屋内)を確認
3. 溶接の有無を確認
4. 表面処理の可否を検討
5. コストと調達性を比較
例えば、強度が300MPa以上必要で溶接不要ならA2017が有力候補になります。一方、屋外使用で曲げ加工が必要ならA5052が合理的選択です。

よくある質問

A2017とA5052はどちらが強い材料ですか?
強度だけで比較するとA2017の方が高強度です。引張強さはA2017-T3で約430MPa、A5052-H32で約230MPaと約2倍の差があります。高い応力がかかる構造部品にはA2017が適していますが、その分耐食性はA5052より劣るため、使用環境を踏まえた判断が必要です。
屋外や海水環境で使用する場合はどちらを選ぶべきですか?
屋外や海水環境では耐食性に優れるA5052が適しています。A5052はマグネシウムを主成分とする5000系合金で、腐食に強い特性があります。一方、A2017は銅を含むため耐食性が低く、腐食環境ではアルマイト処理や塗装などの表面処理が前提になります。
溶接や曲げ加工を前提とする場合はどちらが適していますか?
溶接や曲げ加工を行う場合はA5052が適しています。A5052は延性が高く曲げ割れが起きにくい上、溶接性にも優れています。A2017は高強度ですが溶接には不向きで、加工方法によっては特性を十分に活かせないため注意が必要です。
材料選定で迷った場合、どのように判断すればよいですか?
まず必要な強度を算出し、次に使用環境や溶接の有無を確認します。強度が300MPa以上必要で溶接不要ならA2017、屋外使用や曲げ加工が前提ならA5052が合理的な選択です。最後に表面処理の可否やコスト、調達性まで含めて総合的に判断することが重要です。

まとめ ― A2017とA5052の違いは設計思想の違い

A2017は「強度を取る材料」A5052は「耐食性と加工性を取る材料」です。この本質を理解すれば、材料選定で迷うことは大幅に減ります。 アルミ合金全体の体系や他の5000系・6000系との違いについては、「アルミ合金の種類に関して解説」で詳しく解説しています。 材料選定はコストだけでなく、強度・加工・環境条件を含めた総合判断が必要です。本記事がA2017とA5052の違いを理解し、最適な材料選定を行うための指針となれば幸いです。

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