圧入とは何かを現場目線で完全解説|原理・設計・計算・失敗対策まで網羅


圧入とは、軸と穴の寸法差(しまり代)を利用して部品同士を塑性変形または弾性変形させながら組み付ける結合方法です。溶接やボルト締結を使わずに高い固定力を得られる反面、設計や管理を誤ると割れ・焼付き・精度不良などの重大トラブルにつながります。本記事では圧入とは何かという基礎から、設計計算、JIS規格、公差設定、現場で多発する失敗事例と対策まで、実務で必要な項目のみを体系的に解説します。

圧入とは|基本原理と仕組み

圧入とは、軸径を穴径よりわずかに大きく設計し、プレスなどの外力を加えて挿入する締結方法です。組み付け後は、材料の弾性回復力により接触圧(面圧)が発生し、摩擦力によって軸と穴が固定されます。

項目 内容
結合方式 摩擦力による固定
使用工具 油圧プレス・サーボプレス等
固定力 非常に高い
分解性 基本的に不可

 

なお、圧入の寸法基準や公差体系についてはJISのはめあい規格で定義されており、詳しくはJISで解説されています

圧入としまりばめの違い

現場では「圧入」と「しまりばめ」が混同されがちですが、厳密には以下の違いがあります。

区分圧入しまりばめ 組付方法常温で圧力をかけて挿入加熱・冷却による温度差挿入 必要設備プレス機加熱炉・液体窒素など 精度管理高精度な寸法管理が必要温度管理が重要

公差設計やしまり代の考え方については、はめあい設計全般の考え方と深く関係します。

圧入で得られるメリットとデメリット

圧入の主なメリット

  • ボルト不要でコンパクトな設計が可能
  • 高いトルク伝達・軸方向保持力
  • 繰り返し荷重に対する耐久性が高い
  • 部品点数が少なくコスト削減につながる

圧入の主なデメリット

分解が困難過大な面圧による割れ・変形のリスク寸法誤差がそのまま不良に直結プレス設備が必須

圧入設計における基本計算

しまり代の考え方

圧入の基本はしまり代(Δ)の設定です。

しまり代 Δ = 軸径 - 穴径

例えば、φ20の軸をφ19.98の穴に挿入する場合、しまり代は0.02mmとなります。

圧入力の簡易計算式

圧入力 F = π × d × L × τ

d:軸径、L:圧入長、τ:許容せん断応力

この計算によって必要なプレス能力の目安を算出できます。

圧入におけるJIS公差の考え方

圧入はJISの一般公差(H7・p6など)を基準に設計されます。

用途公差軸公差 軽圧入H7k6 中圧入H7m6 重圧入H7p6

アルミ材を用いた圧入の場合は、材料特性の違いにより設定値も変わります。

圧入加工の代表的な失敗事例と対策

割れの発生

しまり代の過大設定や面取り不足が主因です。特にアルミや鋳鉄では外径割れが多発します。

焼付き・かじり

潤滑不足、圧入速度が速すぎる場合に発生します。モリブデングリスの使用が有効です。

圧入に適した材質と適さない材質

適している:S45C、SCM415、ステンレス鋼注意が必要:アルミ、鋳鉄、焼結合金不向き:脆性材料、低硬度樹脂

軟質材への圧入は塑性変形が大きくなりやすく、再現性が低下します。

現場で実践される圧入品質管理のポイント

全数寸法測定(軸径・穴径)プレス荷重の波形監視圧入深さのデジタル管理初物時の断面確認

よくある質問

Q圧入としまりばめの違いは何ですか?
圧入は常温でプレスなどの外力をかけて組み付ける方法で、しまりばめは加熱・冷却による温度差を利用して挿入する方法です。目的は同じでも、設備・精度管理・作業性が異なります。
Q圧入で割れや焼付きが起こる原因は?
主な原因は、しまり代の過大設定、面取り不足、潤滑不足、圧入速度過多などです。特にアルミや鋳鉄は割れやすく注意が必要です。
Q圧入のしまり代はどのくらいが適正ですか?
適正なしまり代は軸径・圧入長・材質・使用用途によって異なりますが、一般的にはH7×k6〜p6の組み合わせが多用されます。過小でも過大でも不具合の原因になります。

まとめ|圧入とは設計・計算・管理の三位一体で成立する技術

圧入とは単なる組付け作業ではなく、設計(しまり代・公差)加工(寸法精度)管理(プレス荷重・傾き)の三要素が揃って初めて成立する精密技術です。JIS規格の理解と実測管理を徹底することで、割れや焼付きといった重大トラブルを確実に防止できます。圧入設計を感覚に頼らず、必ず数値で管理することが、品質トラブルゼロへの最短ルートとなります。

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