SS400とS45Cの特性比較:構造用鋼と中炭素鋼の違いを徹底解説
鋼材を選定する際、「SS400とS45Cのどちらを使えばよいのか?」と迷う方は多いでしょう。どちらも一般的な鋼種ですが、実際には炭素量・強度・熱処理性などの点で大きな違いがあります。本記事では、両者の特徴を比較し、用途に応じた最適な使い分け方を解説します。
SS400とS45Cの基本的な位置づけ
まず、両材質がどのような規格に属しているかを確認しておきましょう。
| 鋼種名 | JIS規格 | 分類 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| SS400 | JIS G 3101 | 一般構造用圧延鋼材 | 溶接性・加工性に優れた低炭素鋼 |
| S45C | JIS G 4051 | 機械構造用炭素鋼 | 高強度・熱処理適性を持つ中炭素鋼 |
このように、SS400は構造体・建築材などの「形を作る」用途に、S45Cは機械部品など「力を伝える」用途に向いています。
化学成分と炭素量の違い
両材質の特性を左右するのは、主に炭素量と合金元素の含有量です。
成分SS400S45C 炭素 (C)最大0.25%程度(規定値なし)0.42~0.48% マンガン (Mn)最大1.4%0.6~0.9% リン (P)0.05%以下0.030%以下 硫黄 (S)0.05%以下0.035%以下炭素量が高くなるほど、強度や硬度は向上しますが、その分加工性・溶接性は低下します。SS400は溶接や曲げ加工が容易である一方、S45Cは高強度・高硬度を得るための熱処理(焼入れ・焼戻し)が前提となります。
機械的性質の比較
次に、実際の機械的特性を比較してみましょう。
性質SS400S45C(焼ならし状態) 引張強さ400~510 MPa570~700 MPa 降伏点245 MPa 以上343 MPa 以上 伸び17~21%16%前後 硬さ(HB)約120~140約170~200S45CはSS400よりも約1.3倍の引張強さを持ち、耐摩耗性にも優れます。ただし、加工コストや溶接性の面ではSS400が優れています。
熱処理と加工性の違い
両材質の大きな差は「熱処理の可否」です。
- SS400:熱処理による強化は困難。構造物など、常温での強度で十分な用途に使用。
- S45C:焼入れ・焼戻しにより、硬さをHB200〜300程度まで高められる。シャフトやギアなどに最適。
また、S45Cの熱処理後は加工が難しくなるため、機械加工 → 焼入れ → 仕上げ研磨という工程が一般的です。
熱処理に関する詳細は「金属の熱処理工程に関して解説」で詳しく説明しています。
用途の違いと実際の選定基準
どのような場面でSS400とS45Cを使い分けるのか、具体例を挙げてみましょう。
用途区分SS400S45C 構造物(建築・架台)◎(溶接性・加工性良好)△(過剰品質) 機械シャフト・ピン類△(強度不足)◎(熱処理で高強度化) ボルト・ナット〇〇(高負荷部に適用) 精密部品×◎このように、SS400は「構造物やフレーム」、S45Cは「機械部品や動力伝達系」に適しており、役割がはっきりと分かれています。
コスト・調達性・生産性の比較
もう一つ重要なのが、材料コストと加工コストです。
SS400は流通量が多く、鋼材価格も比較的安価。S45Cは中炭素鋼のため材料単価が高く、さらに熱処理や加工コストも加算される。したがって、同じ形状・サイズの部材を作る場合、S45Cの方が総コストは約1.5~2倍になるケースがあります。コスト重視の設計ではSS400が選ばれやすい傾向です。
よくある質問(FAQ)
まとめ:目的に応じた最適材の選び方
まとめると、SS400とS45Cの違いは次の通りです。
SS400:低炭素で溶接・加工が容易。構造物向け。S45C:中炭素で強度・硬度が高い。機械部品向け。「コスト優先ならSS400」「耐摩耗・高強度ならS45C」が基本方針です。